ピノ・ドナジオ

再演奏ベスト版必携


最近ドナジオの噂を聞かなくなった。
メジャーになり切らない頃のデ・パルマに名コンビとして数々の傑作を世に放った。どれも印象深く、美術館シークエンスのスコアが映画自体を喰ってしまった「殺しのドレス」、学生映画にバロック調の「悪魔のファミリー」、トラボルタの後悔をオペラチックに盛り上げる「ミッドナイトクロス」、弦楽のみのスコアにハーマンを感じる「ボディ・ダブル」、みんな大好きですよ。所が出世したデ・パルマの野郎はビッグネームのモリコーネと付き合い始め、心あるファンから大いに失望を買ったものだ(モリコーネがダメと言うのではないよ勘違いせぬ様) 作品内容もかつての「ヒッチゴッコ」を「無かった事」にする暴挙にでて、「アクションも人間ドラマも出来ますよ」と宣伝したはいいが、作品の核の部分に過去の映画から大胆な引用をするクセが全然抜けてない。
ドナジオもハリウッドには大して興味が無いようで、本国での仕事が殆どの様だ。所有の数枚あるイタリア国内版のサントラを見てもコメディやら色んな題材をやっている。ジョー・ダマトの原始人マッチョ映画(邦題失念)にスコア書いているンだからその職人ぶりに感心。
クラシックの勉強をしたが世間の脚光を浴びたのはヴォーカルのポピュラー音楽で、相当売れたそうだ(プレスリーも歌ったらしい) どんなきっかけで映画に誘われたのか判らないが、ニコラス・ローグの「赤い影」(アレンジと指揮はドナジオではない)のスコアを担当する事になり、そのサントラを聴いたデ・パルマ亡きハーマン先生の後釜として「キャリー」に抜擢したと言われている。「赤い影」も初作としては「100点満点中120点満点!」、とは言わないが良い(笑) でも「キャリー」と比較すると段違いで、キャリーでは何時もはほとんどオケの指揮をしない彼が珍しく棒を振っている。それだけこの仕事に賭けたンだろうし、結果が全てを語っている。
シェリンクの封を切ってない「殺しのドレス」のアナログLPが結構自慢。サントラCDも廃盤になって久しいな。