お嫁においで

国際秘密警察

ネタ無くて、前も同じ事別ントコで書いたけど、増幅して書き直します。
若大将シリーズ全盛のころ作られた一本。青大将の出てこないシリーズ傍系としての位置にあると思う。妹が内藤洋子なのはチョッとやりすぎで、結局加山が振られるのは映画内のバランスを考えた結果だろう。両手に花じゃ観客の共感を呼ばないもんな
貧乏な主人公の女性が、ナイスガイのエリート社員と、幼馴染のタクシーの運ちゃん間で揺れ動く恋愛物語。だが私はこの映画、本多監督自身を描いた私小説ならぬ私映画じゃねえかと思った。
ナイスガイの加山雄三。祖父が造船会社会長で、父がその社長、加山は設計部長。たまたま出会った主人公に一目ぼれ。庶民代表黒澤年男の役は、自分の気持ちに真っ直ぐで、周りの迷惑も考えないところがあり、そして主人公をズート思っている。
この映画で気になる事と言えば、主人公の加山雄三がエリートに設定されている所か。勤めている会社は一族経営で、彼も将来経営に加わるだろうと言う形で仕事をしている。妄想タクマシイ俺はこの部分に引っかかったな。脚本は松山善三だが、必ず脚本に手を入れていた本多監督の事だから、そこにプラスアルファが有るはず。本多監督は自己主張を、演出上でも実生活でもする方ではなかったそうだが、この「お嫁においで」のなかには監督自身の人生観が出てきていると思うし、つられる形で無意識のもっと心の奥深いドロドロした物も浮き上がって来ている気がする。意地悪な見方だが加山雄三の役所を本多監督の周りから見つけ出そうとすると、どうしてもダブって見えてくるのが生涯の親友黒澤明監督だ。東宝に、軍に徴兵中だった本多監督より後に入社し、共に助監督として山本嘉次郎監督の下に付きながら研鑚を重ねた日々(実際は「あの映画イイよねぇ〜」と酒呑んでただけかも) 2・26事件にホンのチョッと関係したと言うだけで何度も徴兵された本多監督に対して、一度も軍隊に採られること無く撮影所内で純粋培養(と言うのも変だが)されていった黒澤監督。書き上げた脚本が採用され「姿三四郎」の監督として異例の大抜擢で出世街道に入った黒澤監督は、この映画の加山雄三の役にダブって見えてくる(私はそう見る) 死ぬまで友情の続いた(いや両者あの世だから友情はまだ続いているのか?) 黒澤監督と本多監督の二人だが、巨匠へと向かって行く黒澤監督、冷たい言い方だが方や東宝の雇われ監督でしかない本多監督、晩年の「影武者」以降演出補佐として黒澤明の傍らについていた本多猪四郎だけど、その内側にドス黒くうごめく物は本当に無かったのか? 「お嫁においで」はヒロインを巡る加山と黒沢の対決が描かれるが、二人とも非常に濃い顔つきで、先輩後輩だが似た者同士に見える。ミフネの「知的」な部分と「粗野」な所を別人格に分離させた様なキャラクターだ。その黒澤年男の役が、本多監督の内面を行動として描写したと妄想(笑)すれば(本多監督も「熱い」モノが有ったのだ)映画内での三角関係は実生活において、黒澤監督、本多監督、本多夫人のきみさん、を巡る三角関係が本当に有ったのじゃないかと、私は思ってしまうのだけど(笑)
この説は佐藤利明氏によって即座に否定された(笑)
仕様
東宝ビデオ発売。シネスコ・デジタルモノラル・CX。磁気素材を使用したのか音質が良い。